救世主

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救世主

『――魔女狩り』  15世紀に端を発したとされる、欧州の国家とキリスト教会によって行われた異端迫害。魔女として告発された人々は宗教裁判にかけられ――結果、その多くが火刑に処された。  そして、私ヘレナもその被害者の一人……いや、正確には被害者ではないのかな。結果的には、こうして火刑を免れたわけだし。  だけど、私以外の身内は全てあの忌まわしき裁判の犠牲者となった。そんな中、私だけが命からがら生き延びて――  ……なんで、逃げてきたのだろう。なんで、私独りだけ生き延びてしまったのだろう。父も母も姉もみんな理不尽に命を奪われ、一縷の希望すら見出だせないこんな世界で……いったい、私はどこに向かえばいいというのだろう。ならばもう、いっそのこと私も家族(みんな)のところへ――  ――そんな、一縷の光も見えない絶望の淵にいた最中(さなか)だった。さながら天上の使者のごとく穏やかな微笑みを浮かべ、そっと手を差し伸べてくれる蒼い瞳の青年と出逢ったのは。    
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