殺風景に刃を

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「いいなー、生徒は簡単にサボれて。俺もサボりてー」  私は日陰から出て、先生からだいぶ距離を取った。そんな私を見て、先生が「暑くないの?」と聞いてくる。 「こっちにおいでよ。熱中症になっちゃうよ」 「いや、大丈夫なんで」 「屋上で与田が熱中症になってぶっ倒れたら、俺のメンツが丸つぶれになっちゃうから。本来立ち入り禁止の屋上でサボっていた女子生徒と一緒にいた男性教師。色々アウト。今の時代、教育委員会とか色々厳しいんだからね?」  ふーっと美味そうに煙草を吸う先生が手招きした。私はじりじりと距離を詰め、ギリギリ日陰に入るくらいの位置まで移動する。微妙な距離感が気まずい空気になる。 「遠くね? 俺嫌われてる?」 「まぁ……」 「え、なんで!? 俺、この学校で一番人気な教師なんだけど!?」 「一番人気な人でも、全員から愛されている訳じゃないということですね」 「深いなぁ……」  先生は壁に頭をつけると、ふーっと白い息を上に向かって吐いた。 「ここ禁煙ですけど」 「いいじゃん、ちょっとだけ。俺も色々ストレス溜まってんのよ」 「先生みたいな人でもストレス溜まるんですね」 「そりゃ溜まるよ。人生なんでもイージーモードじゃないからさ。教師なんてブラックな仕事、溜まんない奴の方がおかしい」 「そんなにブラックなんですか」 「ブラックだね。毎日残業だし、生徒のことも常日頃から考えないとだし、パワハラやセクハラといったハラスメントも注意しないとだし。モンペとかもさ。だるいったらありゃしない。煙草吸ってなきゃ生きていけないよ」
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