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SNSで ”13歳の頃に戻ったらどうしますか?” という記事を見つけた。 どうやら、13歳に戻ってやりたい事を書き出すと、その内容は今までの後悔が詰まっているらしい。 だから、今日からでもそのことを実践して行けば、この先もっと開けた未来が訪れる、と言うのだ。 「へ~」と、私は思わず声を出してしまった。 広樹がびっくりして、 「さゆちゃん、どうしたの?」 と、聞いてきた。 私は、先ほど読んだ記事のことを話した。 「なるほどね。そう言われたら、そうなのかもしれないね。13歳の頃なんて何にも考えてなかったな。でも、よくあるタイムリープの話でも説得力あるかも。」 と、広樹が言うので、 確かに、とうなずきつつ、タイムリープの話じゃないけどね、と思った。 この少しだけ間違うところが、可愛い。 「寝てるときの夢がそのまま現実になってタイムリープする、っていうドラマとかあるじゃん。あれとか本当だったらすごくない?」 「俺、変な夢は見るけど、そこまで現実的な夢って見ないかもなぁ。それか覚えてないのかもしれない」 と、どこか楽しそうな表情を浮かべながら一生懸命に何かを思い出そうとしているので、私も一緒に何かを思い出そうとしてみた。 「私は夢、結構覚えてるし、同じような夢見ることもあるよ」 「えっ、そうなの?」 「もちろん、ずーっと覚えてるってことはほとんど無いけど、起きてすぐは覚えていて夢占いとか検索しちゃうもん。」 「さゆちゃんぽいね、夢占い。最近どんな夢見たの?」 「えー、、、どんなんだったかな。結局覚えてないし、夢は夢だよ。」 「そうだね。さて、気を取り直して、段取り確認しくちゃね。」 広樹、篠原広樹と私、岩渕さゆりは、まもなく結婚式を挙げる。 私たちの出会いは、友人の紹介で知り合い、私から告白をした。 そして、約2年間の交際期間を経て結婚を決めた。よくあるエピソードだが、私は運命だと思っている。 広樹ほど、私を理解してくれて、受け入れてくれる人はいない。 プロポーズは広樹からだったが、結婚の話をし始めたのは私だった。 プロポーズをする男性のインタビューで 「この人を放っておけない。自分が幸せにしてやりたいと思って」 という言葉があるが、私も同じだった。 「私がこの人を幸せにしたい、人生をかけて幸せにしたい」 と、そう感じたし、その自身がある。 私の大好きな人だ。 私は昔から結婚願望が無かった。だからといって、遊びたい、だとか、縛られたくない、という気持ちがあるわけでもない。 本当に結婚願望が無かっただけだ。 女の子ならば、良くある話で 「私の将来の夢はお嫁さんです」 というのがあるが、それが全く無かったのだ。 結婚が決まった時も、ウエディングドレスに憧れもなかったので、結婚式を挙げなくてもいいかなと考えていたが、さすがに親が悲しんだ。 和装で簡易的な式にしようかとも考えた。 しかし、 「せっかく挙げるならウエディングドレスを着て欲しいな。」 と、言うことで、式場で挙げることにした。 結婚式は最初に行う大きな親孝行だと思った。 結婚願望が無い私だったが、白無垢を着てみたいとい気持ちはあった。 白無垢を結婚式で着るものだと知ったのは少し大人になってからだったが、もし結婚式を挙げるなら和装が良かった。 そのことを広樹に話したら、 「前撮りしようよ。日本庭園でばっちり和装で写真撮ってもらおう。」 と、言ってくれた。 嬉しかった。 私にとっては、プロポーズよりも嬉しかった。 和装での前撮りは楽しくて楽しくて、オフショットがすべて爆笑しているものだったのがその証だ。 結婚願望が無いからといって、恋愛が苦手ではなかった。 むしろ、どちらかといえば、恋愛は好きな方で、常に好きな人がいるタイプだった。 幼稚園の時からずーっと好きな人がいて、代わる代わる私の人生を華やかにしていった。 かといって、その人たちとの間に何かが起こったことは全くなかった。 初めて彼氏ができたのは大学生の時だから、それまでは本当に”ただ好きな人がいた”というだけだ。 クラスに一人、バイト先に一人、塾に一人。行く先々に好きな人がいた。 だから、13歳の私にも好きな人がいた。 たぶん、最初のクラスで同じだった、背の大きめな子だったと思う。 入学式が終わって、自分のクラスの教室に入った時、きれいな顔をしている男の子だな、と思って印象に残った。それから通学路で見つけては少し近くを歩いたりしていたと思う。 そんな風に、好きって思うことが楽しかった。 だけど、初めて本当に好きな人に出会ったのは、15歳だった。
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