1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ほら、あの子だよ、あの子! あの子が美鈴ちゃん。めちゃくちゃ可愛いだろ?」
純也と一緒に、新歓コンパの会場となる居酒屋の近くまで来てみると、すでに五十人以上の人間が店の前でたむろしていた。
その中からめざとく沢口美鈴を見つけた純也は、肩を組みながら興奮状態で俺に話しかけてくる。
「あの子が入るって決まってから、一年生男子がドドっと入ったらしいぜ。やっぱり、可愛い子の吸引力は半端じゃないよな」
「まあ、確かに。パッと見た感じ、五十人以上はいるもんな。うちの新歓コンパでこんなに人が集まったのなんて、初めてじゃないか?」
「俺たちが一年生の時の新歓なんて、あの半分くらいだったからなぁ」
純也と会話しながらも、俺の視線は沢口美鈴に釘付けだった。
前評判通り、とてもアニメ研究会に入ってきそうなタイプとは思えない雰囲気をまとった女の子で、清楚でありながらもキラキラしている。いつ芸能事務所にスカウトされても何ら不思議はない。
うっすらと茶色がかった、背中の真ん中あたりまであるストレートの長い髪が印象的だ。
新歓コンパが始まると、早速沢口美鈴の周りに人が集中した。
アニメ研究会の中では、比較的容姿や喋りに定評のある面々が、こぞって沢口美鈴を楽しませようとしている。
もちろん、俺はその輪に入れない。
長机の端っこの方で、一人チビチビとハイボールを口にしながら、時折チラリと沢口美鈴の方に目をやるだけの存在と化していた。
あまりにチラチラと見すぎたためか、視線を感じたのだろう、たまに目が合ってしまうこともあった。
そのたび、恥ずかしさと惨めさをハイボールで流し込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!