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case6-11. 下校の時刻
「大事な人って……、そんな事は……」
口ごもる鏡子に、朴葉は調子を取り戻す。
「わかりやすい反応する人だなぁ。まあ、恋愛かどうかなんて、どっちでもいいですよ。ただ、人からものすごい力が出る時っていうのは、恋愛絡みが相場でしょ?そうでなきゃ、肉親絡み」
そこまで言って、朴葉は花の結界を説明できる可能性に気がついた。
肉親絡みか。
花と、鏡子との縁は切れているはずだ。それなのに、花たちは鏡子の正義に傅き頑張っている。
「あなたが何を言ってるのか、全然わかりません」
不遜な表情で立ったままの鏡子に向かって、朴葉は一気にまくし立てた。
「僕に対して、はっきり自分が何をやらかしているのかわからなくても、だいたいは感覚でわかっているのではないですか?さっき言ったでしょ、あなたは僕に消えて欲しいと思い、実際僕は店から排除されてる。あの、大量の花を店に持ち込むキッカケを作ったのは花野さんです。でも、その優しさを、花が囲いこんでる。とにかくね、あの大量の花があるから、現実として、僕は店に入れなくなってるんですよ。それは、あなたの恋愛パワーなのか、おじいさまからのパワーなのかわかりませんが。だいたい、新聞の件だって、暴走し過ぎじゃないですか?花野さんは断らないよ、ああいう人なんだもん。鳥居さんが自分のために骨を折ってくれたんだな、ってすぐ気がつくんだから、そりゃ、断らないでしょ。でも、新聞に載って、いっぱいお客が来て、とか、そういうの、花野さんが望むのかな、って、鳥居さんは考えたの?」
「なんで」
鏡子の握った拳が、ぶるぶると震えている。
「なんで、よく知りもしないあなたなんかに、こんなに説教されなきゃならないんですか」
「説教?だからー、こっちには実害が出てる、って言ってるでしょ。わかんない人だなぁ」
「花をどこかにやれば、いいって事ですか?」
「花がなくなっても、あなたの考えが変わらなきゃ、別の形に変わるだけだろうね」
「私の考えが、間違ってるって事」
独り言のように言って、鏡子は悔しそうに口を曲げた。
「間違ってる、っていうより、正しいと思いすぎる、っていう気がするよ。で、幸か不幸か、あなたには、加護があるのよ、普通の人より。鳥居さんの家、平均よりかなり裕福でしょ?まあ、そういう感じで。だから、あなたが正義と思った事が、現実化しやすいんだわ」
「そんな事、ないですよ。全然、思った通りになんか、なってないです。あの、花だって、どんどん枯れていったし、自然に返そうとしても失敗しました。どうしようもなくなって、花野さんにまかせたんです」
「あのねぇ」
朴葉のトリガーが外れて、今度こそ完全に説教モードへ突入した。
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