ママとご対面①

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ママとご対面①

 僕はワケありの、さまよっているバター。  さまよった末に入り込んだこの家の冷蔵庫内に潜んでいたのだけど、たった今、ママに見つかってしまったところだ。別に悪いことをするために隠れてたわけじゃないんだけどね。    冷蔵庫を開けたママに僕は、「おはようございます!」ってあいさつをした。一日の始まりだから気持ちの良いあいさつを元気いっぱいにしたのさ。  するとママは少し驚いたみたいだけど、「お、おはようございますぅ」ってかえしてくれた。 「驚きました?」 「もちろん、驚いたわよ。だって、あなたバターだもの。冷蔵庫を開けたとたんに、急にバターが、あいさつをしてきたら誰だって驚くわ」  ママがフフッって笑う。 「そうですよね。すみません、驚かせてしまって」  僕は、しょんぼりする。 「いいの、いいの。何が起きるかわからない世の中なんだから、バターが話すことだってあるわ」  そのママの言葉に僕は救われる。 「ところで、どうして真っ白な喋るバターが、うちの冷蔵庫にいるのかしら。バターを買った覚えはないけど」とママが不思議そうな顔をして言う。 「まず、僕は普通のバターとは違うんです」 「知ってる」 「それと」 「あら、何かしら」 「僕は人間に危害を加えることのないバターです」 「うーん。そんなこと言って急に爆発したりするんじゃないの?」    そこで、ママが深刻な顔をしながら「バーン!」と叫び、後ろにジャンプしながら吹き飛ばされる動きをした。 「しませんよ。というか、できません」 「本当に?」 「本当ですって」  少しの沈黙があり、その間にも、冷蔵庫内の冷気が徐々に失われていくのを感じる。 「とりあえず話してもらえる? あなたのこと」 「信じてもらえるかどうか……」 「信じましょう。少なくとも、うちの夫よりは信用できそうだから」  ママがフフッって笑う。 「ご家庭でいろいろと大変なんですね」 「そう、でもね……何だかんだ言っても、ちゃんと夫を愛してるから心配はご無用よ。彼は、私の可愛いウサギちゃんみたいな存在なんだから。わかる?」 「何となくわかります」 「まあ! お利口なバターですこと」  ママがウインクする。  僕は反応に困った。 「で、僕のことについてなんですが、高温でもとけない体質でして、そのことで困っていて、さまよっているんです」と話し始めたところで、ママが「あらそう。じゃあ、続きは常温のあっちでお話しましょう。電気代がもったいないから」と言って、僕を親指と人差指で摘んで、近くにあるテーブルの上に置いた。  冷蔵庫のドアが、「朝から暑くて喉が渇くわね」とペットボトルを取ったママによりバタンと閉められる。  
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