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神ノ木社長は、さすが会社のトップなだけあり、様々な方面に精通していて頭も要領もいい。ついでに見た目も年相応にイケている。 大学の恩師、多良川教授から『神ノ木グループ御曹司の家庭教師』の仕事の以来を受けたのは今から2ヶ月ほど前。 それまで俺は、大学研究室の手伝いと週に2回依頼されていた大学病院での心理カウンセリングを担当していた。 『家庭教師』は週5びっしりで、御曹司の高校生につきっきりという条件だったので、病院でのカウンセリングは後輩の臨床心理士に引き継いだ。 ちょうど依頼者が途切れたタイミングだったので良かったと思う。 研究室の手伝いは、土日の空いているときにまだ好きでやっている。 多良川教授が周囲にわからないよう話をしてきたのでまあ、ただのカテキョではないのだとは思っていた。俺はひとまず、神ノ木社長に会うことになった。 神ノ木社長は俺に言った。 『息子、翔弥の付属大学の合格』『対人恐怖症の改善』ーー表向きは、この二つの依頼だった。 だが、社長はそれだけの仕事にしては多すぎる契約金を提示してきた。 同時に、俺に近づき、腰を抱くように隣に座った。 その意味は、『神ノ木社長の夜の相手をする』ーーだ。 多良川から俺の性的対象を聞いたという神ノ木社長は、俺を雇う内容にそれを組み入れた。その直後、時間が空いたという神ノ木社長と、俺は寝た。 百瀬(あいつ)のいう通りだ、俺は高校生の家庭教師をやる傍ら、その親と関係を持っている。 でもまさかーーその息子までも俺がタイプとか言い出すとは、想像していなかったが。 「生娘じゃあるまいし、別にいいよな?俺が誰と寝ても」 そう言ったら芦屋が少し驚いてこちらを振り向いた。 「は?なに新見、お前今、俺以外にも誰かいんの?」 「あー……まあな。仕事関係だけど」 「うげ……っ、ジジイかよ」 芦屋はタバコを加えながら嫌そうな顔をした。俺は一本同じものをもらうことにして、火をつける。 「ジジイではないな。まだ40過ぎくらいのイケメンの金持ちだから」 「どっちみち嫌だわ。イケメン?金持ち?いくらもらってんの」 「企業秘密」 「は~まあ別にいいけど、いや、良くはねぇな。ちゃんとセーフティーSEXしてんだろうな?」 芦屋は余ったゴムの箱をカタカタ振りながら聞いてきた。当たり前だろ。生でさせるわけねーし。 「妬くか?仕事だとしても、俺が他の男としてたら」 「そりゃまあな。こないだ言ってた高校生といい、モテ期かよ、お前」 煙を吐き出しながら、そのままキスされる。 翔弥にされたのとは比べ物にならないくらい、芦屋のキスはいやらしい。 「妬くんだったら……、芦屋が俺の本命になるか?」 「いいのか?俺の恋人になったらお前、もう俺以外とヤれねーけど」 「独占欲かよ、くだらねぇ」 「新見は尻軽だからなぁ~。いちいち嫉妬しなきゃいけないのはキツイ」 芦屋は笑いながらそういう。 ーー失礼な奴だな。どうせ最初から本命になるつもりなんてないくせに。 俺は特別うまくもないタバコを少し吸ってすぐに灰皿に押し付けた。 「尻軽で悪かったな。SEXは俺の趣味だ。身分がしっかりしてて好みの男となら、本命がいてもヤる」 「堂々と浮気宣言してんじゃねーよ!」 ぐしゃぐしゃと髪の毛を触られた。 やめろ、という俺に芦屋は聞こえないふりでもするように乗り掛かってくる。 「でも、一番イイのは俺だろ?大学の頃からもう10年、お前の身体を抱いてるのは俺だ」 「ーーそうだな。お前の抱き方は好きだ」 「……嬉しいねぇ、なあ、新見」 芦屋は、ちゅ、と俺にキスをする。 「俺が一番イイならーーお互い30になったらちゃんと付き合おう。お前の浮気は、多少目をつむってやるからさ」
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