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プロローグ。
グレー色の空から止めどなく落ちてくる真っ白い雪は、まるでオレの身も心も凍えさせようとしているようだった。
「かあさん!! とうさん!!」
静寂の中、オレは目の前の惨劇をただただ見つめることしかできなかった。
真っ白に降り積もる雪の上に鮮血が流れているその先には見事な銀の毛を持つ大きな狐が二匹、横たえていた。
駆け寄ろうとしても、オレの身体は鉛のように重く、腕さえも動かすことできない。
「無様だな、古都。素直に俺の言うことを聞き入れていれば、こんなことにならずにすんだのに――」
腰まである銀の髪をなびかせ、オレと同じ金の目をした青年はまるでいつまでの振り続けるこの雪のように冷たい。
「神楽……」
こんなところでくたばってたまるかと、オレは必死になって青年を睨んだ。
「その表情もいいね。すごく好みだ」
睨んでいるっていうのに、神楽は口角を上げてニタリと笑っている。
雪の上に力なく横たわっているオレに手を伸ばしてきた。
なんとかその手から逃れるため、身を捩った。
だけど……。
「っくぅ………」
身体を動かせば、両足に激痛が走る。
「ダメだよ? そんなに動かしちゃ。君は大怪我を負っているんだから……」
他人事のようにそう言うけど、目の前にいるコイツがオレの両足に怪我をさせたんだ。
激痛で視界が霞み、気を失いそうになる。でも気を失えば最後、奴から逃げ道はない。
今は眠っちゃダメなんだ。
眠ればすべてがコイツに奪われてしまうんだから……。
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