ビルの上

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 久しぶりにここに来て、私が思い出したのは、苦しみや彼女への恨みだけではなかった。彼女に別れを告げられたあの日、何が起こったのか。それを思い出したのだ。  あの日、私は、彼女に別れを告げられて。覚悟していたことのはずなのに、彼女の言葉を受け入れたはずなのに、耐えられなくて、体が勝手に動いて、そして、彼女のことを。  あまりに辛すぎて忘れてしまっていたのだ。結局私は捕まらず、そういう事件が起こったから、このビルに人が住まなくなり、さびれてしまったのだろう。  私は。思い出してしまったことが辛かったけれど、でも、これが絵を描く原動力になりそうだと思うと、少しほっとした気持ちになったのだった。
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