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「貴女にお母様などと呼ばれる筋合いはありません。――私のことはママと呼びなさいといつも言っているでしょう!」
「ご、ごめんなさいママ上様」
お母様。
その呼び名は私の実の母のみを指すものだから、自分のことはママと呼べと常日頃からおっしゃる。
私としては、そこにこだわりなんてあまりないんだけどね。
だいたい、ボルディにはお母様と呼ばれてるんだからいいじゃないのさ。ダメ? ダメか。
「それで、ママ上様は一体何をしにここへ? 御付きもつけずに、外へ出るなんて珍しい」
「貴女、それは本気でおっしゃっているのですか? まあよいでしょう。折角ですので、元娘に対してせめてもの、せめてものッ! お見送りでもして差し上げようかと、そう思った次第です」
「は、はあ……」
何故だろう、いつも以上に当たりが強いようなそんな気がしてくる。
ふとそんなことが疑問に思ったが、気が付くと私は手を強く握りしめられていた。
「あ、あの……」
「当主様のお決めになられた事故、こちらも口出すつもりはございませんが。これが母としての最期の語らいにもなりましょう。しかし私は多くは語りません、風邪などひかぬよう健康には気を使いなさい。それだけです」
「はあ……」
いや、それだけって言うけれどもね。
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