第7話

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 そんな事を考えていた時の事、一人の魔導士が大急ぎで丘の上まで走ってきた。 「た、たたたたタイヘンだー。何故かどういう訳か援軍が別の所からやって来ているぞー」 「な、なななななんですってー。くっそーこれは予想外だったー」  おい、もう少し演技しろよ。  あからさまじゃないか、最初からこうなるのわかってたろ!  何よこの演出! アクションショーを見に来たわけじゃないんだけど!!  走って来た魔導士の背後から現れたのは、全長五メートルはある巨大な魔物だった。  いや、何あれ? なんだあんな子供の落書きみたいな顔してんの?  見た目が明らかに今までの魔物と毛色が違うんだけど。 「み、見ろー。あれはもしや最近魔導院が開発したと街で噂の、超最新鋭人工魔物ではないかー。いつの間に我々の研究成果が盗まれていたんだー」 「がおー」  要するに、この作戦に便乗して自分とこの成果もアピールするつもりって事でしょうが。  何よこの茶番! こんなのに付き合わされてるこっちの身にもなれっての!  何が、がおーだ。その何の迫力も無い鳴き声は何なのか? 「ぐわあ、やられたー」 「くっそお、歯が立たないー」  そんな事を言って特に何もせず蹴散らされていくのは、死に晒せだなんだと物騒な暴言を吐いていた連中。  さっきの威勢はどこへやら、途端に吹き飛ばされ……違うな、わざと転がっている。  もっと演技の出来る人間は居なかったのだろうか? いくら何でもこれは酷すぎる。
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