第9話

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「うむ、活躍は聞いているぞ。よくやったな少女よ。流石は私が見込んだ逸材だ」  あの一件から数日後。  例よって例の如く、街を歩いていると、全っ然関係ない全くの赤の他人であるあの不審者のおっさんに話し掛けられた。 「皆さんここに不審者が居ます! 不審者が居ますよ!!」 「わあああ! 待ちたまえ! 分かった! ちゃんと話しをするから! だからその拡声器を下ろしてくれ!!」  私の持つ拡声器を取り上げると、それを地面に置いて話し始めた。 「実はな、先日の魔導院の一件、私には見えていたのだ」 「はあ、で?」 「あのような邪知に富んだ蒙昧の輩が国の重要機関を担うなどあってはならない事である!」 「そうですね。で?」 「そこで私は考えたのだ。かの聡明なランブレッタ公の娘であり、稀代の魔導士との噂も密かにある君の手で成敗して貰おうとな」 「ご自身でやられては駄目だったので?」 「残念ながら、私には表だって動けぬ理由があった。だが、君はこの件を快く引き受け、私の期待以上の働きをしてくれた。この目に一寸の狂いも無かったという訳だな。その上、今は勘当された身。公的な立場を気にする事なく好きに動けるという、まったく都合の……いや、身軽な身で助かったぞ。あははははは!」  いつ誰が快く引き受けたっていうのよ。無理やりやらせといて。  ああ、もうムカついた! 好き勝手言いやがって!!  目の前で高笑いを浮かべるおっさんの覆面に手を掛けた。   「この!」 「止めるんだ! 仮にも覆面で顔を隠している者の素顔を暴こうなどと!!!」 「うるさいですわッ!!」  剥ぎ取った覆面の下から現れたのは……。 「……え?」 「くっ、バレてしまっては仕方無い。そう、私だ。お前の元父、現ランブレッタ家当主であるタジラート・フォン・ランブレッタだ。驚いて声も出まい」 「え? ホントにお父様ですか?」  何故ならその人物は、まぶたを青く腫らし、頬に引っ掻き傷を大量にこしらえた、見るも無残なお姿だったからだ。正直、見た目じゃ判別出来ない。 「な、何でそんな事に!?」
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