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私はミエラ君が入院をしている病室を訪れていた。
吹き飛ばされた彼は、肋骨や鎖骨を骨折していたが命に別状は無かった。
「お加減いかが?」
「ああ、コルニーさん! こ、こここんな見苦しい姿を見せ、ってしまうなんて! ご、ごめんさい! 結局、僕は貴女の為に何も出来ませんでした」
「いいのよ。あれは貴方の責任じゃないわ。……あと、悪いこと言わないから転職しなさい」
「いえ、それでも!」
「いいから、ね? ほら、これでも飲んで」
「あ、ありがとうございます」
私は差し出したのは、店で取り扱っているカフェオレだ。
友人の見舞いに行くとマスターに言ったら水筒に入れて持たせてくれた。
それを飲むと、彼の表情は少しだけ和らいできた。
「美味しい……」
「そうでしょう? ウチの店のコーヒーを甘くしたものよ。どう? 気分が良くなったかしら?」
「はい。あの、でもどうして?」
「私が好きでやってる事だもの。気にしないで」
そういえば、こうして面と向かって話しをするのは初めてじゃないだろうか?
学園時代じゃクラスメイトとといってもあまり話す機会が無かったから。
あまり誰かと居た所を見たことが無い彼。
でも、頭が良くて教師たちの覚えは良かった彼。
その頭の良さが災いして、あんな所に就職してしまった彼。
ミエラ君も頑張っているのに……。
どうしてもイマイチ報われない、可哀そうな子だなと思う。
よしっ! 決めた!
「ねえ、もし良ければだけど、私の働いているお店に来てみない?」
「え? そ、そんな! ぼ、僕なんかが行ってもいいんですか!?」
「ええ勿論。むしろ来て欲しいわ」
「……で、でも」
「もう決定! だから、早く怪我を治して退院してね」
そう言って微笑むと、彼は顔を真っ赤にして俯いてしまう。
……ふふふ、可愛いところあるじゃん。
何というか、どっか放っておけないのよね。
弟を持った姉の気分とはこういう事なのかしら?
その後も暫く、時間の許す限り彼と他愛の無い話を楽しんだ。
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