第1話

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 なんて清々しい人々でしょうか。自分たちが正しくてしょうがないようです。 「お気になさらず。既にこのことは両家で話し合って決まっておりますので、あしからず」 「そういう事さ、ふふん。でも今更遅いよ。君は僕に捨てられたんだ、これは決定なんだ。もうどうにもならないのさ。悔しいかい? だろうねえ!!」 「はあ……」  何故、私が負けたみたいな雰囲気を出してくるのかほとほと不思議ですけれど。  え、何? 二人の期待に応えて嘆けばいいのこれ? やだぁ。  そう、私に思うところはありません。  元婚約者が今更どこのお嬢様とお懇ろになられたとしても、最早何の未練も感じる事が出来ないのです。完全に幻滅しましたので。 「ふふ、それとね。君にとっても重大なそんな事をぼくは伝えなくてはならないんだ。ああ、なんて悲しみ背負っているんだぼくは!!」 「お泣きにならないで、そのようなお役目はわたくしが背負いますわ!」 「君は…っ! なんて清らかな心の持ち主なんだバリア!!」 「アリアです」  つまんない舞台だなあ。いや、この無駄な百面相は一つの芸のとして見れるかもしれない。  磨けばお金が取れるのでは? お金は持ってるから別にいいのか、納得。    表情を変えるのに飽きたのか、二人はそれから話の続きを始めました。 「赤の他人のわたくしの口からお聞きになりたくはないとは存じますが」 「もう終わりにして欲しいのだけれど」 「お喜びを、これで終わりですわ。そう、あなたの人生もね。ふふふふ」 「早く、早く」 「急かさないで下さいまし! ブムゥ様との婚約が終わり、その責任を取ってコルニー様から家名を取り上げるとの事です」 「誰が?」 「あなたのお父様が」 「誰に?」 「あなたにです。……そう言っているでしょう!」  はえー。私、追い出されるの。ええ……。  アリアは口調だけ悲しそうに話しながら、器用な事に笑みを浮かべていました。  芸達者だなあ。
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