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「……なんですかな? それは」
「見ての通り“薬草”ですけれども」
「やくそう? は? 草? 我輩に草を食えと?」
「お食べになってもよろしいですし、直接傷口にお当てになってもよろしいですわよ」
「はっ! 冗談ではない! 誇り高き騎士の我輩がそんな原始的なアイテム使えるか!」
「……げんし、てき? あの、現代でも流通されている回復道具ですけれども」
「それはそなたの住む村だけの話であろう。そもそも薬草なら煎じて粉末にするとか何かに混ぜるとか口にしやすいように加工するものであろう。そなたのそれは、まんま葉っぱではないか。そんなもの回復アイテムとは認めぬ!」
「ではお伺いしますが、騎士様の認める回復道具はなんですの?」
「無論、世間一般に回復アイテムと言ったら普通、“ポーション”であろう! ポーションは持ってないのですかな?」
今度は娘がポカンとした。
「なんですのその、ぽぉしょんって」
「なに? ポーションを知らぬとな? やれやれ。これはとんだ世間知らずの田舎娘であるな」
騎士は傷だらけなのも忘れ立ち上がると、ここぞとばかりに解説を始めた。
「よいか、ポーションとは回復アイテムとしては最もポピュラーな飲み薬である。ビンに入っている故、携帯や持ち運びに楽。もちろん長期保存も可能。味もそこそこ美味い。何より見た目が高級感溢れ美しい。更には回復量に合わせハイ、エクス、メガとバリエーションも豊富。まさにポーションこそ科学の髄を極めた人類の叡知の結晶! モンスターが蔓延るこの世界を旅するのになくてはならない必需品である!」
「へえ、そんな素晴らしいものがあるなんて18年間生きてきましたのに全く存じませんでした。勉強になりましたわ」
騎士は満足げに頷き、再び木に背をもたれた。
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