回復不愉快不服かい?

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「救援物質の援助、一応感謝する。これで城まで戻れよう」 「あら、私の村へ参りませんの?」 「そなたの村にはポーションを売ってないのであろう? 道具屋にポーションが無いなど、宿屋にベッドが無いようなもの。熾烈を極める過酷な旅においてポーションが無くては生き延びることなど到底不可能。ポーションこそ命の源である」 「中毒者かってくらいポーションを推してらっしゃいますけど、そもそもポーションの成分ってなんですの?」  騎士は急に口ごもった。 「それはまあ、身体に良い物質と物質を調合して合成した化合物に水を混ぜて色々施して……」 「明記されてませんの? 主な成分とか生産者の名前とか」 「そ、そんな細かいこと知る必要無かろう。みな店で普通に購入し消費しているのであるからして何も問題無い」 「誰も何も疑問に思いませんの? 城下町の人々は思考停止してまして? まともな人間なら例え回復作用があっても得体の知れないものなど口にしません わ。少なくとも私はそう。副作用で後々身体に異常をきたさない保証など無いわけですし。やっぱりどこの誰か分からない人間が手を加えた人工薬品より古来より使われている自然薬物のが安心安全ですわ」 「自然薬物の方が危険であろう! 誤って毒が入っていたり身体が痺れたり幻覚を見たりする草を口にしないとも限らぬしな! 例え安全が保証された薬草であっても野生のモンスターが小便をひっかけたかも知れぬ! そんな不衛生なもの軽々しく口にできるか!」 「でしたらお野菜も果物も穀物もキノコ類も一切口にしないことですわね! お魚や獣の肉にも病原菌が潜んでいるかもしれませんから神経質で軟弱な人間は食べない方がよろしくてよ!」 「そなたは我輩に餓死しろと申すか!」 「大好きなポーションを毎日ガブガブ飲んでたらよろしいんじゃなくて? ポーションは健康をサポートし肉体を活性化させ一日に必要な栄養も補える魔法の薬品なのでしょう?」 「どんだけポーションを万能だと思っておる! ポーションはあくまで回復薬であり空腹を満たすものではない!」 「ふふん。その点薬草なら多少はお腹が満たせますわ。パンが無いときに重宝しますわ」 「何の話をしておる!?」  体力を回復したばかりにも関わらず、騎士はゼーゼーと肩で息をし始めた。
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