今宿題やってるから!

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 なんかよくわからない考えだな。学校の成績が良くならないんだったらやらないのか。そこがここに住む俺たちの考えと、他所から来たやつの考えの違いなのかな。  タツマはここに来てからゲーム機はないのとか、暑すぎるからエアコンあるところに行きたいとかいろいろ言ってるけど。俺たちの答えはいつも決まってる。 「ないよそんなの」 「マメ君は何やりたい?」 「夏になると蚊に刺されるじゃん。でも明らかに蚊じゃない謎の虫に刺されることって結構あるよな?」 「ある! 蚊に刺されたあとってかくとピンク色に腫れるんだけど、かいてない時って全然目立たないじゃん?でもずっと赤黒く腫れてる虫刺されってあるよな。しかも痒いんだけどかくとすげえ痛い」 「あれ謎すぎる。蚊じゃないんだったら何なんだ? だから今度こそ正体を突き止めでやるんだ」  盛り上がる中、タツマはちょっとあきれたように言った。 「やるって言ったってどうするんだよ? 何か虫が食いついてくれるまでひたすら待ち続けるのか? 寝てる時に刺されたらどうやってそれ確かめるんだよ」 「そんなの、見張りすればいいじゃん」 「そうそう。全員で寝て、誰か一人起きてて、変な虫たかってないか見る」  微妙な表情になるタツマ。どうやらこれもお気に召さないらしい、結構わがままだな。何やったって楽しいんだから何したっていいじゃないか。別に蛇やムカデが噛み付いてきてるわけでもないのに。 「一番涼しいところ探す選手権とかどうよ?」 「暑いもんなー。あ、川とかはナシだよな?」 「当たり前」  家の中にいる時と、木の日陰にいる時、同じ日陰なのに全然涼しさが違う。だから本当に暑い時はここに避難すれば絶対涼しいっていうところをみんなで探そうということになった。 「そんなの湿度の違いだろ、理科やってりゃわかるじゃん」 「知らね」  俺たちの言葉にタツマはやれやれ、って感じだ。シリツって学校らしくて、勉強進んでるらしい。 「それに温度計とかないのにどうやって調べんの?」 「別に温度計なくても、みんながそこに入って涼しいと思ったら涼しいでいいじゃん」 「数字で出さないと客観的に判断できないだろそれ。評価するのは学校の教師だよ、大人ウケする内容の方が褒められに決まってるだろ」  いい学校に行くことが家族全員の目標らしくて、タツマは何かと成績につなげる事しか言わない。もしかしてこいつほんとに楽しい遊びを知らないんじゃないかな? 俺たちの中でそんな空気が流れ始めた。 「とりあえずタツマ、お前は文句言わず一回俺たちの遊びに全部付き合え」
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