今宿題やってるから!

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「……。田舎ってもっと楽しいって聞いてたからせっかく来たけど、本当に何もないんだな。わかったよ、全部終わったら俺帰るわ。エアコンないのマジ無理。クソ暑い。今時コンビニ一つないとかありえないんだけど」  なんとなく機嫌が悪そうになったけど俺たちは全員でガッツポーズをした。遊びが全部終わる頃には絶対にこいつも楽しいって言ってくれるはずだ。だって俺たちは毎日こんなに楽しいんだから。 「じゃあまずは朝顔を植えるぞ。誰が最初に芽を出すか、誰が最初に目印のところまで蔓が伸びるか。一番花がたくさん咲いたやつは誰か、他にもいろいろできるからな朝顔」 「朝顔が育つまで俺ここにいないけど?」 「朝顔なんてすぐに育って花咲くって。で、次はセミの観察! 幼虫がセミになるところ、観察日記つけるぞ!」 「はあ? 無理に決まって」 「文句つけるなって言っただろ? 俺たちやったことあるから大丈夫だよ。次、自分で作った食べ物って買ったものよりすごくうまいんだ。夏は野菜がおいしいからな。キンッキンに冷えたきゅうりに味噌つけてかじると最高にうまいんだよ」  そこまで言った時、思い出した。こりゃしまった、うっかりしてた。 「やべ、味噌がないかも。食いきっちゃったよなたしか」 「じゃあ作るか」 「は?」 「夏野菜も全然ないから種まくところからだな」 「味噌ってそんなに簡単にできないだろ。それに野菜だって」  どこか慌てた様子のタツマに俺たちはケラケラと笑った。 「何言ってんだよ、味噌なんですぐだよすぐ。確かに時間かけたほうが美味しくなるけど、あっという間にできるって。味噌が余ったらそれで味噌汁作れるし」 「夏に味噌汁、あんまり食いたくなくない?」  猫舌のアダッちはあまり乗り気じゃなさそうだけど。 「余った夏野菜を全部味噌汁に入れると最強の夏飯が完成するじゃないか。うまいし、夏はしょっぱいものを食べた方が体にいいんだぞ」  俺たちの会話にだんだんタツマが静かになってきた。よしよし、びっくりしてるに違いない。きっとこういう遊びしてこなかっただろうからワクワクしてくれてるのかも。 「そうだ、花火作ろう! 打ち上げ花火、でっかいの!」 「すげー! あ、火薬どうする?」 「ないから作るしかないな。ま、黒色火薬なんてパパっとできるって」  俺達の会話にタツマの顔が引きつってきた。どうした、ウンコ漏れそうなのか?  「な、なあ。俺明日か明後日には帰るぞ?」 「すぐだって。あっという間に終わるよ全部」
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