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「ブロック塀のヒビの中とか」
「アリの巣の中とか?」
「マンホールの隙間は?」
「ポストの中だな!」
「ひらめいた、あそこだよ消火栓のホースの中!」
「あったまイイな!」
「全部こもってんなあ。風通し良くないと結局涼しくないんじゃない?」
「だよなあ、どこかな? あ、じゃあさ」
まるで真後ろで会話されているかのように声はずっと聞こえてくる。走っても走っても秘密基地から出ることができない。
「タツマの、影の中とかは?」
「いいねえ、涼しそうだな」
「何でだよお! なんで、出られないんだよ! 誰かあああ!」
偉そうな態度だったのに急に弱虫みたいなひっくり返った声を出すタツマ。俺たちはその様子がなんだかおかしくて、悪いけど大爆笑だった。
「俺たちアイスキャンディで乾杯しただろ?」
「タツマ、頭イイのに黄泉竈食ひ知らねえの? いや俺ら死んでないけど」
あっはっは! みんなでケラケラと笑う。同じ釜の飯食ったら、仲間じゃん。俺達と同じってことじゃん?
「あ、自由研究のネタを思いついた」
いやだ、言わないでくれなんかとんでもないこと言われそうで嫌だこわいこわいこわい
「誰が最初に、タツマを心から喜ばせる遊びを考えられるか」
さんせーい!
「俺ら遊び考える天才だし、たくさん思いつくから安心しな」
「エンリョして嘘つくなよーすぐわかるからな俺ら」
「だってタツマ、俺たちの遊びに『文句言わず』『全部』付き合うって言ったもんな?」
全部全部全部。全部、ってどのくらい?
無限に。だっていくらでも思いつくから。
永遠に。だっていくらでも時間あるから。
たたた、っと走り抜けていく子供たちに声をかけた。
「おおい、ウチの辰馬見なかったかね。野菜取るの手伝ってもらおうと思ったんだがなあ」
その言葉に、三人の子供らはあははっと笑って走り去っていく。
「夏休みに手伝いしろって一番言っちゃだめな言葉だぞ!」
「そうそう。それに今、自由研究やってるところだからダメ!」
「終わったらタツマに言っておくよ!」
「はっはっは、そうかそうか。宿題やってる最中じゃ邪魔しちゃいかんなあ、頑張れよ」
「ありがと!」
「はて。あの子らどこの家の子だったかな?」
俺たちの夏は、まだまだ終わらない! 始まったばっかりだ! 宿題全部やっちゃったら、二学期来ちゃうもんな!
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