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「だからずっと黙ってたんスか? そんならそこで俺を止めて、好感度アップ狙わないと!」  まさかこいつ、俺の止め待ちでずっと大沼のプライベート聞き出そうとしてたのか? いやいやさすがにそれは……。  引き戸が開き、大沼が戻ってきた。寺田に俺の気持ちを知られてるかと思うと、恥ずかしくて顔を上げられず、取り皿のサラダの残骸を意味もなく箸でいじくってしまう。 「大沼さん、飲み物どうします?」 「あ、違うのにしようかな」  大沼が座ると、またふわりといいにおい。もっとそばに寄りたいけど、でも。俺こう見えて、酔っぱらったふりしてちゃっかり密着するとか、できねえんだよなあ。寺田に気持ちを知られてると分かったら、なおさらだ。  俺の横で、楽しそうにメニューを見る二人。ビールをあおって、ひっそりため息。  俺、そんなに分かりやすく大沼を好きだって態度に出してたのか? 寺田は正式に営業部に配属されて、まだ数ヶ月だぞ? ってことはもしかして、大沼も俺の気持ちに気づいてる、なんてこと、あったりして……? 「樹、大丈夫? 飲み過ぎた?」  ふいにそっと、俺の肩に触れる大沼の手。ワイシャツ越しに感じるぬくもり。心配そうな顔。 「ビ、ビール数杯なんて飲んだうちに入らねえよっ」  見事に声が裏返ってしまい、俺は内心自分にがっかりする。にやりと笑う寺田。応援するとか、絶対面白半分だろ、お前! 「それならいいけどさ……」  なんか言いたそうな目。黙ってる俺をチラチラ気にしてたってのがマジなら、うれしいやら申し訳ないやら。確かに枝豆に夢中になってる場合じゃなかった。
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