4

19/21
前へ
/69ページ
次へ
「今日、泊まってくでしょ?」  当然のような甘えた声で俺の顔を見上げ、右腕を撫で下りていく手。行き着いた先にある俺の手を、ぎゅっと握る。 「えっ、い、いやその……」  コクって即エッチしてその上泊まるって、盛りだくさんすぎねえか? いくらなんでも、一気に進みすぎだろ。一日に味わえる幸せの許容量、軽く越えてきてるし。 「帰っちゃうの? 明日用事でもあるの?」  しょぼくれたさみしそうな顔。これまで見たことのない顔を、次々見せてくる。そんな顔されたら、帰れねえだろ。 「ねえけど、でも……」  でも? と首をかしげる大沼。なんだか前よりも無邪気な感じって言うか隙だらけって言うか、気を許されてる気がするのは結ばれたからなのか? 「俺は樹とエロいこともっといっぱいして、ずっといちゃいちゃしてたいよ?」  笑顔はさわやかなのに言ってることがエロくて、頭がクラクラする。普段は人前じゃめったに下ネタも言わねえのに、ギャップありすぎだろ……。 「恋人同士になったのに、ガマンする必要ある?」  まっすぐな視線。すり寄せられる身体。改めて、「恋人」って言葉にドキッとする。 「案外欲張りだな、お前」  俺はちょっと圧倒されて、頭をかいた。 「マジで、引かないでね」  少し情けない顔で言い、俺の手を握る手にさらに力をこめる大沼。  プレゼントは俺だ! ぐらいの勢いで行けばいい、という寺田の言葉を思い出す。誕生日を一緒に過ごすってことが大事だとも。だったら恥ずかしさとかそんなのは捨てて、プレゼントに徹しようか。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

387人が本棚に入れています
本棚に追加