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「今日、泊まってくでしょ?」
当然のような甘えた声で俺の顔を見上げ、右腕を撫で下りていく手。行き着いた先にある俺の手を、ぎゅっと握る。
「えっ、い、いやその……」
コクって即エッチしてその上泊まるって、盛りだくさんすぎねえか? いくらなんでも、一気に進みすぎだろ。一日に味わえる幸せの許容量、軽く越えてきてるし。
「帰っちゃうの? 明日用事でもあるの?」
しょぼくれたさみしそうな顔。これまで見たことのない顔を、次々見せてくる。そんな顔されたら、帰れねえだろ。
「ねえけど、でも……」
でも? と首をかしげる大沼。なんだか前よりも無邪気な感じって言うか隙だらけって言うか、気を許されてる気がするのは結ばれたからなのか?
「俺は樹とエロいこともっといっぱいして、ずっといちゃいちゃしてたいよ?」
笑顔はさわやかなのに言ってることがエロくて、頭がクラクラする。普段は人前じゃめったに下ネタも言わねえのに、ギャップありすぎだろ……。
「恋人同士になったのに、ガマンする必要ある?」
まっすぐな視線。すり寄せられる身体。改めて、「恋人」って言葉にドキッとする。
「案外欲張りだな、お前」
俺はちょっと圧倒されて、頭をかいた。
「マジで、引かないでね」
少し情けない顔で言い、俺の手を握る手にさらに力をこめる大沼。
プレゼントは俺だ! ぐらいの勢いで行けばいい、という寺田の言葉を思い出す。誕生日を一緒に過ごすってことが大事だとも。だったら恥ずかしさとかそんなのは捨てて、プレゼントに徹しようか。
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