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「え~、すごいじゃないスか。生粋の江戸っ子ってヤツ?」 「別にすごくないよ。それを言うなら、大島専務んとこも相当昔から甘酒横丁に住んでるよ」  あ、そうなんだ。俺もむしゃむしゃ枝豆を食いながら、タッパがあるのに痩せてて、イケオジとか言われてる専務を思い浮かべる。たぶん、背は大沼と同じぐらいだ。ずっとうちの会社一筋に勤めてきて、昔は大きな案件を次々決めてくるやり手営業だったらしい。今はすっかり、温和ないかにも人がよさそうなおじさんだけど。 「マジっスか? 思いっきり観光スポットじゃないスか」 「うん、専務は長男で実家は雑貨屋だから、いろいろ大変みたい」  そりゃ初耳だ。大沼の顔を眺めながらビールジョッキをあおると、大沼は俺をチラッと見て微笑んだ。  優しい瞳。まんざらでもねえけど、まるで小動物を見るような目だ。そりゃ、二十センチ以上身長差があるから、仕方ねえけどさ。俺はちっちゃい分すばしっこいし、こう見えて脱ぐとすごいぜ? 「枝豆、もっと頼もうか」  気づくと、俺の目の前の皿は枝豆の殻で山盛りになっていた。寺田もそれを見て、クスッと笑う。 「そうしましょうか、最初からデカいの頼めばよかったっスね」 「塩がきいててうまいわ。外回りで汗かいて塩分が失われたんだよ、たぶん」  俺はぶっきらぼうに言って、唐揚げを頬張った。くそっ、二人して微笑ましそうに俺を見やがって。俺はお前らのペットでもガキでもねえぞ。 「こっから人形町って、全然歩けますよね?」  あれ、また話を戻したな。こいつ、よっぽど都心に住んでるっていうのに興味あんのかな。実家は東北だっけ? それだったらまあ、東京都中央区在住の人間なんてそうそう出会わねえよな。
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