Knockを奏でる日

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 コンクールに出続けるというのは、当然人と競い合う事。単純に技術だけじゃなくて、プレッシャーとの戦いでもあるんだ。 「黒田の音だって、輝いているわ」  私の言葉に、黒田が顔をあげる。 「聴きに行ったよ。中一の時にコンクール。誰よりも輝いてた。実際優勝してたしね」 「来てたんだ」 「おかげで……またピアノ弾こうって思った。とても楽しそうに輝いていたから」 「……え?」 「あぁ!もうっ。こんな事いうつもりなかったのに!」  恥ずかしくて思わず窓へと視線を移す。 「あんたの音で、私はまたピアノに戻ったの。それくらい衝撃だったのよ」 「そう、だったんだ」  なによ、これ。なんで私はこんな告白してるの?  もともとこんな話をしに来たはずじゃなかったのに。 「私達、お互いの音に惹かれ過ぎね」  ふふっと黒田が笑って、ポンとピアノを弾く。 「私が本格的にピアノと向き合おうと思ったのは、詩の『子犬のワルツ』のせいよ」 「はあ!?」 「小五になってすぐの発表会。私、こっそり行ったの。周りの子が緊張したりしている中で、詩は本当に楽しそうに伸びやかに演奏してた。あの姿が私は忘れられないの。私もあんな風に弾きたいって思ったわ」  私の最後の発表会。あの時は、最後にするつもりはなかった。  ただ可愛いドレスを着て、大好きな曲を、いつもよりきれいな音がするピアノで弾けるのが楽しくて。 「あれ以来、私はどのコンクールや演奏会に出る時でも、必ず演奏の前に思い出している。どんなに緊張する場面でも、詩の姿と音を思い出すと、それだけで心が落ち着くのよ」 「大げさ。それはちゃんとあんたが練習の成果が出せているだけよ」
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