2.息子と母

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「ちぇっ、使えねぇな」  祖母の葬儀で思わず舌打ちする。俺と養子縁組して母親(アイツ)を追い出してくれるって話だったのに、その前にくたばっちまった。でもまぁ死んじまったもんは仕方がない。どうせ祖母の財産は俺のものだ。そこはいい。だが父親が死んだ時にアイツが相続した分がある。それはアイツが死なないと俺のものにならない。 「あーあ、早く死んでくれねぇかな」  アイツはいつも小動物みたいにビクビクして人の顔色を窺ってる。あんな態度ばっかり取ってるから父さんに殴られるしバァさんにもいじめられてたんだ。最近になってそれがよくわかる。どうしてあんなやつと結婚したんだか。 「ただいま。すぐにお夕飯にするからね」  仕事から帰ってきたアイツがキッチンに立つ。 「これ、また買っといてやったよ。ビタミン剤」  ま、中身はビタミン剤なんかじゃないけど。ネットを駆使して手に入れたちょっとした〝おくすり〟だ。 「まぁいつもありがとうね。今日は圭祐の好きな唐揚げにしたからね」 「ああ、わかった」  俺はアイツの小さな背中を見てひとりほくそ笑んだ。
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