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マスター、私の声届いてますか?
マスター、私アナタの側に何時でもいるんですよ。
マスター、私が居るのに泣かないで下さいよ。
でも、無理しないで下さい。
姪のふーちゃんの前で気丈に振る舞わなくっていいです。
ふーちゃんだって隠れて泣くアナタにとっくに気付いていますよ。
マスター、いつもみたいに隣に居れ無くてすいません。
でも、私いつもアナタと一緒に居ますから。
死んじゃったけど一緒に居ますから。
申し訳ありません。マスターを狙った敵に迷いもなく突進してすいません。
騎士みならいなのに捨て身で誰かを守るって無いですよね。
残された人間がどんな思いするか、ちゃんと考えて無いのって家族として有り得ないですよね。
でも、身体が勝手に動いちゃったんです。
御免なさい。
マスター。
マスターが斬られるって思ったら足が走り出してたんです。
アナタ達の事困らせるつもりは全くなかったんですよ?
というか、私はちゃんとアナタの背中に寄り掛かってるんです。私は此処に居るんです。
…まあ、幽霊の言葉なんてアナタに届く筈無いけど。
アナタ怖がりですもんね。
…どうしよう。私死んだクセに涙出てきた。
どうしよう。死んだの後悔し始めてきた。
…マスター知ってます?
幽霊が自縛霊になったら生まれ変われないって事。
…アナタは知る由もないですよね。
でも、私は絶対ヒトに生まれ変わってみせますから。
それで、今度こそ私が居なきゃどうしょうもないアナタの側にずっと居ますから。
アナタより少しでも長生きしてみせますから。
だから、少しだけの間サヨナラさせて下さい。
も一回、アナタに会える為の準備してきたいんです。
マスター、…なんでだろ。前が見えないや。泣いてるアナタの姿が直視出来ないや。
…なんで私幽霊のクセして泣いてるんでしょう?
マスター、マスター、私は貴方が大好きでした。
この感情に気付かなくて、ずっと云えなくてスミマセンでした。
マスター。
正直、正直私死んでからもアナタと、ふーちゃんと離れたくないです!!
唯一の肉親である姉さん独りに残したくないです!
でもねマスター、私、貴方とまた一緒に居たいんです!!
平和な世界でずっと生涯共に生活したいんです。
だから、ちょっとだけ、待ってて下さい。
マスター、泣かないで。アナタ残して成仏出来なくなっちゃう。
マスター。
さようなら。
また、会いましょう。
****
日比野みい子は涎まみれの机から上半身を起こした。
どうやら寝てたらしい。
都内の高校3年A組の教室内で、彼女は上半身を起こした。
「ったく、日比野妹、やっと起きたな」
見上げた教師の姿に、みい子の両目から涙が噴き出した。
「ちょぉ!?どうした日比野妹!?」
サラサラな髪が特長的な教師が慌てる態度でも、みい子の目から流れ出る水滴は止まらなかった。
「なん、でも、ない、です。私だって意味解りません」
泣きじゃくりながら返事をする彼女に担任教師の将暉蓮馬はただ焦る。
「ちょ!?…俺、日比野保健室連れてくわ」
蓮馬は自分の行動に驚いた。
本来なら保健委員にその役割を頼むべきなのに。
なおさら付け足すとすれば、普通なら、クラスメイト達に揶揄されていいシュチュエーションだ。
なのに、教室の大半はみい子と同じく皆涙ぐんでいる。
人をからかうのが大好きなムードメーカーの幼でさえ机に突っ伏して泣いていた。
妹が大好きな日比野花菜は口に手を当てて泣きじゃくってる。
将暉蓮馬はみい子の手を引く。
必死で教え子たちと同じく泣きたい気持ちを抑えた。
「…せんせぇ」
後方の日比野みい子の声に将暉の意識が集中する。
「良かった。ちゃんと会えてたんだ。ま、す、たァ。マスター!!」
前世を思い出した蓮馬が、号泣するみい子の身体を抱きしめるのに数秒すら時はかからなかった。
fin
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