【×日目・大広間】プロローグ「世界に一つだけの指輪」

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「その婚約、お待ちください!」  バンッと勢いよく大広間の扉が開かれて、2人の人間がこちらへ向かってくる。来たー! ルビーのように赤い髪が芯の強さを感じさせる美しい伯爵令嬢と、その後ろを従者のように付き従う長髪の狩人だ。よっ主役!  2人はわたしと王子の前にやってくると、神に祈るようにその場にかしずいた。 「ああ王子さま、わたくしめの話をどうかお聞きください。わたくしはあなた様の隣にいる公爵家のご令嬢に命を狙われて、今の今まで身を隠していたのです」 「なんだと!?」  信じられないという目で王子がわたしを見る。  はいその通りです。伯爵令嬢の言う通り、わたしは台本に従って彼女を殺すように狩人に命じました。でも、すんなり認めちゃうと話が破綻するので全力でしらばっくれる。 「な、何を言いますのこの娘は! ねえ王子様、こんな娘の言葉よりも、永遠の愛を誓い合ったアタクシのことを信じてくださいますわよね? 先ほどのお茶の時間にもお互いの想いを確認し合ったではありませんか、ね?」 「それならば、わたくしは王子様と永遠の愛を誓い合った確かな証拠を持っております。王子様のお母上……つまりお妃様が身に着けておられた形見の婚約指輪です」  伯爵令嬢は白いハンカチに包まれた指輪を取り出すと、大切そうに左手の薬指にはめて、その手を高く掲げて皆に見せる。まごうことなく、王子の父親である王が妃に送ったエメラルドの指輪だった。
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