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「間違いない、肖像画に描かれている指輪と同じものだ!」
貴族の一人が声を上げて指さすほうには、王と妃と王子の3人が描かれた大きな肖像画がある。その妃の手には、伯爵令嬢が身に着けているエメラルドの指輪と、まったく同じものが描かれているのだ。
「たまたま同じ指輪をはめているのでは?」
「何を言うんだ、こんな大きな宝石のはまった指輪なんて、そんじょそこらの人間が手に入れられる物ではない」
周囲がざわめきだして、熱気が高まる最高のタイミングで、わたしは悪あがきをする。
「そ、その通りですわ! 誰もが見ることのできる肖像画を真似て、この娘は偽物を用意したに違いありませんわ!」
「もう諦めなせえお嬢様」
表面上は必死に弁明するわたしの言葉をさえぎるように、狩人が重い口を開いた。
「王子、俺はあなたの隣にいる悪女に命じられて、伯爵家のご令嬢様の命を奪おうとこの城にやってきました。しかし、そんなことはとてもできない、できなかった……それで殺したふりをして今までかくまっていたのです。俺の隣にいる、このご令嬢様の言葉こそ本物です」
狩人の言葉に、王子はいよいよ確信を持ったのか隠し切れない怒りにじませて、絞り出すように話し出す。
「……伯爵家の娘が着けている指輪は、間違いなく余の贈ったものだ」
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