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二週間後、仲江の家に行き二階の部屋に案内されて中に入ると、ツジリが先に彼女に取材をしてその合間に葵陽が何枚か写真を撮っていった。 次にリビングへと移動して機材を設置しているソファに座っている仲江は葵陽の様子を見つめて微笑むと彼も微笑み返していた。それを見たツジリが二人がどことなく親しげそうな雰囲気を出しているので知り合いなのかと訊いたが違うと葵陽は言い返した。 「では、また撮っていくのでさっきみたいに硬くならないようにしてカメラを見ていてください」 仲江は真っすぐにレンズを見ては時折窓側を向いてその横顔を瞬時に撮っていき、息の合った様子にツジリはやはり二人がいつの間にか親しくなっているのに気がついたが、また問いかけると彼が反発しそうなので言葉を伏せておいた。 撮影が終わると仲江は飲み物を出すのでソファで待って居て欲しいと言い、台所へ向かい水の入ったやかんにガスコンロの火をつけてその間に焼き菓子も用意した。葵陽たちは機材を片付けた後ソファに座り仲江が差し出したコーヒーをもらうとひと口,ふた口と啜ってはラスクなどの焼き菓子を食べていった。 「結構緊張したでしょう?」 「ええ。あまり写真を撮られるのが慣れていないものなので、どう撮られているのかなって気になりました」 「ちゃんと綺麗に撮れていますよ。うちのフォトグラファーはこう見えても腕利きの良いやつなんで、私も仕上がりが楽しみです」 「一応それで仕事をいただいて生活していますからね」 「ふふ。お二人ともお話ししやすい方でよかった。応募する前まで色々悩んでいたんですが、こうして実際に取材してくださって自分のことを話しているうちに気持ちが吹っ切れました」 「今月末に手術があるんですよね。どのくらい入院されるんですか?」 「十日ほどです。それからまた仕事に復帰しますので」 「あまりご無理なさらずにしてくださいね」 「ありがとうございます。そう言っていただけると心強くなります」 「では僕たちは次の仕事があるので今日はこれで失礼します」 「ああ、ちょっと待ってください。渡したいものがあるので……」 「……えっ、クッキー?こんなに頂きていいんですか?」 「たくさん作りすぎてしまって私と両親も食べきれなくて。会社の方たちにも差し上げてください」 「わざわざありがとうございます。では、頂きますね」 「よかったね葵陽。この人顔に似合わずにスイーツ好きなんですよ」 「そうなんですか?それは良かった。矢貫さん是非食べてください」 「ああ、どうも」 「なにニヤついているのよ。じゃあまた原稿が上がり次第に連絡しますので。恐らく来月くらいになりそうだから退院されてからお電話しますね」 「わかりました。お時間を使っていただいて本当にありがたいです。お気をつけてお帰りください」 家を離れて車で移動している時にツジリは葵陽にさきほどの件を聞くことにした。 「ねえ、今日会う前に単独で仲江さんと会ったの?」 「いや、どうして?」 「会うのって今日で二回目でしょう?撮影している時にやたら仲良さげな感じだったから、なーんか深い関係なのかなってさ」 「それはない。お前の考えすぎだ。仲江さん病気の事話してくれたあとすっきりした表情だったよな。相当勇気を出して話してくれたんだなって感じたよ」 「そうね。女性特有の病って男性側じゃなかなか認知されにくいから、身内でも打ち明けるまで時間がかかるしね」 「お前はいっつも元気だから安心できるよな」 「そうだね、ただいつか突然彼女のように何かしらの病気にかかったらさ……葵陽、手を貸してくれる?」 「俺らはもう別れたんだぞ。お互い良いパートナーに出会えたらその人に支えてもらえるようにしたほうがいいよ」 「私は嫌?」 葵陽は途中路肩に車を停めてハザードランプをつけた。 「嫌ってさ、お前俺に未練あるのか?」 「ない……わけではない。最近再会して一緒に仕事やるようになってから、以前みたいに私の事思ってくれているかなって考えた」 「俺は……まあこっちももう未練なんかないけど、時々そっちがどうして暮らしているのかは、多少は気にしていることはあるよ」 「おばさんになってきてきるから?」 「そう。俺もこの歳だし色々労わりたいなって考えるようになってきている」 「甘党野郎でも健康体なのに?」 「もうさ、甘党野郎はやめて……」 すると、ツジリは葵陽の手を握りしめて彼を見つめてきた。彼が会社に戻ろうと言いハンドルを握ろうとした時、彼女は彼の肩に掴んで身体を抱きしめてきた。 「ツジリ……なんかあったのか?」 「隠し事しないで」 「何を?」 「仲江さん、どういう関係なの?」 「実はさ俺、結婚相談所に行っていてその時カウンセラーの人から紹介されて、あの人と知り合いになったんだ」 「婚活か。するのは悪くはないけど……私はしてほしくないな」 「再婚?」 「うん。自分も変だけど、やっぱり葵陽に未練あるなってさ。他の人のところに行ってほしくない」
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