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けして女顔というわけではないのだが、こういう仕草は可愛くてさまになる。
「それに相手には一度も返事をしたことがないしな」
「え、うそでしょ」
相手にも返事をするとは言っていない。
「人には向き不向きなことがある」
「もー、そんなこといって。俺や部活の子たちとはやり取りしてるじゃないですか」
メッセージが届いたという着信音がなるが後でゆっくり読むことにする。
スマートフォンをしまい、次の授業の準備をしはじめた。
帰りは不定期、朝は部活動のない生徒よりも早い、だいたい決まった時間に登校するからか、待ち伏せをするにはいいのだろう。
桧山だと確認してから手にしていた金色のものを投げた。ゆっくりとそれは空を飛び足元に落ちた。それを大和が追いかけてくる。
「あ、せんせい、おはよう」
あの日を再現するとか、しかも大和を巻き込むとはずるいやり方だ。
「おはよう大和君。今回は答案用紙じゃないみたいだね」
「うん」
浅木から送られてきた画像の金色の飛行機。
それまで用意するとは。それを拾い上げて大和へと手渡した。
「先生に怒られるからな」
「あたりまえだ」
ポンと大和の頭に手をのせて浅木が笑う。
「先生に会いたくて大和を迎えに行ったときに待っていたんだけどさ、会えないまま仕事の時間になってさ、それなら朝にって。お陰で眠い」
確かに眠そうな顔をしている。もしかしたら夜勤明けなのだろうか。
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