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高校生の頃は乱暴な言葉使いと目つきの悪さが怖いと言われていたが、あのころよりも角がとれている。しかも客商売ともあり口調も丁寧だ。
カウンター越しでシェイカーをふるう姿はかっこよく、ゆるみそうな表情を両手でこすりつけて引き締める。
「先生、どうしたの」
「なんでもないよ。それにしても君が作ってくれたカクテルを飲む日がくるなんてな」
「俺も担任に飲ませるとは思わなかった」
いい雰囲気の店だ。皆が酒を楽しんでいる。
「そういえば大和君は」
「二階に住居があるからそこにいる」
「へぇ、お、大和君のお母さんは何の仕事をしているんだ」
浅木の奥さんとして聞くのではなく大和の母親として尋ねる。変に思われたかと浅木を見るが特に気にした様子はない。
「看護師。俺と違ってあいつは昔から勉強頑張ってたからな」
その口ぶりからして幼馴染か。ともかく自分よりも付き合いが長い相手なのだろう。
これ以上はあまり聞きたくはない。この歳で妻子を持たない自分がみじめに感じてしまいそうだ。
「それにしてもこれ美味いな」
「そうだろう? 学生時代ていう名前」
変わったネーミングだなとグラスをまじまじと眺めた。
「へぇ。淡い青色は青春?」
その個所を指さして浅木を見ると、
「先生はそうなんだ」
と小さく笑う。
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