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つりあがった目元が似ているような気がしてドキっとする。結婚し子供がいてもおかしくはない歳なのだから。
もしも彼と何か関係があるとしたら、そう思うと胸の鼓動が激しく波打った。
「かえしてよ」
顔が近い。俯いたままの桧山に、反応が欲しくて顔を覗き込んだのだろう。目を軽く見開いた後、彼の目線に合わせるようにしゃがんだ。
「テスト用紙を飛行機にして飛ばしてはダメだよ」
飛行機のカタチに折れ目のついた答案用紙を広げて指さす。
「だって、かぁちゃんにみせられなもん」
それを受け取ったやまとが拗ねた顔をする。
「そうだね、怒られちゃうかもしれない」
「だろ。だからとばすの」
返してと手を差し出すやまとに桧山はにっこりと笑い、彼が届かないくらい高い所へと手を挙げた。
「あー、おじさんひどい」
やまとからしてみればおじさんだといわれる歳になった。それに彼の親は自分よりも年下という可能性もあるのだから。
「うーん、たしかにあさき君からしてみたらおじさんだけど、こうみえても学校の先生なんだ。なので答案用紙を飛行機にして飛ばすのを見過ごせません」
「え、がっこうのせんせいなの!」
まずいという表情を浮かべるやまとに桧山は頭の上に手を置いた。
「そうだよ。君の通う小学校の近くにある高校で先生をしているんだ。ねぇ、あさき君。先生と一緒に見直しをしようか」
「えぇ、やだよぉ」
驚いたり嫌がったり表情が豊かだ。嘘の笑顔を浮かべるようになった自分とは違う。
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