懐かしき顔

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「もしも、お母さんから怒られるのが半分くらいになるとしたらどうする?」 「え、みなおしをすればそうなるの?」 「0点をとってしまったから先生に教えてもらっていたとお母さんにいうんだ。そうすれば次は頑張ってねって返ってくるよ」  やる気になったやまとはランドセルからペンケースを取り出した。 「それじゃ一緒に頑張ろうね」 「うん」  やる気になってくれた。後は飽きさせないためにはどうすべきかと考えながら一つずつ問題を解いていく。  やがて回答欄が埋まり、やまとがプリントを掲げる。 「できたー」 「よくできました」 「せんせい、ありがとう」  きちんとお礼を言えることにえらいねと頭をなでると、得意げな表情を浮かべて鼻の下を指でかいた。 「ねぇ、やまとくん。自分の名前を漢字で書ける?」  小学一年でも自分の名前を漢字で書ける子はいるが、他の子が読めないという理由から平仮名で書く。  もしかしたらやまとも自分の名を漢字でかけるのではと思い尋ねるとプリントの空白欄に浅木大和とかいた。  やはり彼と関係のある子なのかもしれない。  三年一組、出席番号一番、浅木京(あさききょう)。担当クラスで初めて読んだのは彼の名前だ。  彼のことを聞こうとした、その時、 「大和」  と呼ぶ声がしてその低音の声に胸の鼓動が跳ね上がる。
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