お弁当

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「おい、京」  弁当を包み終えた後。浅木の手がエプロンの中へともぐりこむ。 「んー、揚げ物の香り」 「油臭いだろう。離れろ」 「エプロン姿の恋人にエッチなことをするのってドキドキするよな」 「朝っぱらから盛るな」  その気持ちはわかる。桧山だって浅木のエプロン姿は好きだ。  腰のあたりがたまらなくイイ。 「わかっているよ。大和を迎えに行かないとな」  口ではそういうものの、残念そうな表情を浮かべている。 「後でな」  自分だって同じ気持ちだと、キスをすれば目元がほんのりとあかくなる。 「よし、今日は楽しもう」 「そうだな」 「だけど、やっぱ、もう少しだけ」  浅木の唇が触れチュッと音を立てる。 「ふふっ」  やっぱり目の前に好きな人がいるのだからこうなってしまうのは同じだ。 「なに、笑ってんの」  ちゅ。  今度は桧山からのキス。 「はぁ、えっろい気分になるキスがしたい」 「んー、それだけじゃ済まなくなるから、これでおしまい」 「わかった」  そう返事をしたくせに、口の端にキスをする。 「京、ずるい」 「エッチなキス、楽しみにしてるからな」  今度は桧山から、ということか。 「ほう、お前のが立つようなキスをしてやろう」  挑むような強気に浅木を見て指で胸を押す。  浅木は口角をあげて目を細める。受けて立とうというところか。 「それでは、大和君を迎えに行こう」 「おう」  お弁当をカバンに入れてそれを肩にかける。  浅木の手が桧山の手に触れ、そして握りしめた。 <おしまい>
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