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誘われる
メッセージアプリに毎日何かしらの写真やメッセージが送られてくる。
浅木は可愛い生き物が好きで、大和や猫の写真が貼り付けてあって、それを見て癒される日々だ。
金色の折り紙で飛行機を作ったようで、手に持ってピースをする大和の画像を眺めていたところに、
「先生、この頃、スマホを見てニヤニヤしてますね」
林田に声を掛けられた。
「え?」
そんなつもりはなく、驚いて画面を隠すようにスマートフォンを伏せた。
「いいじゃないですか。何かいい動画でもありましたか」
「違う。十年ぶりに元教え子に会ってな」
「わぁ、いいですね。それからやり取りをするなんて」
憧れますと林田が言う。卒業した後も忘れないでいてほしい、そう思っているそうだ。
なので浅木とのやりとりは林田にとって羨ましいものなのだろう。
「ひとまず連絡先を聞いておいただけ、と思ったんだがな」
「あー、俺も学生の頃にそういうクラスメイトは結構いました。でもそうでなくてよかったですね」
良かったのか?
十年ぶりに会って今のところは一方的にだがメッセージが届く。それにたいして返事を求めるようなことはない。それに文字よりも猫と大和の画像がほとんどだ。
その画像に心が癒される。そう考えると林田の言う通りかもしれない。
「そうだな」
「俺以外に仲がいい元生徒がいたなんてなぁ」
冗談で言っているのは解っているので、くすくすと笑い、
「林田先生が一番だぞ」
と返しておいた。
「わぁ、嬉しいっ」
手で顔を覆い、そして口元に笑みを浮かべる。
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