手記『運命の二人という言葉に踊る』

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 『運命の二人認定クラブ』なるものが、世間を賑わしていた。  とある会社が発案し、とあるテーマパークに導入。  噂が噂を呼び、夏一番の人気スポットと、多くのメディアが報じていた。  個室に二人一組で入り問題に答え、それの合致率により『運命の二人認定証』が授与されることになっているのだが、導入してひと月経っても、その認定証を授与されたのはわずか数組しかいないとのことだ。  問題は数万通りに及ぶとされ、非公式攻略サイトが乱立。  サイトの中身はというと、出される問題の傾向であったり、挑戦する心構えのようなことが書かれていた。  認定証を持っているカップルは、 「いやー、最高ですね! 運命の二人って実感できます!」  等と連日メディアに登場し、まさに時の人となっていた。  『運命の二人認定クラブ』の報道は加熱し、ついにはある事件が起きてしまう。  認定証を持っていたカップルが、デート中に襲われ、殺されてしまったのだ。  報道によると、金銭などは盗られておらず、唯一『運命の二人認定証』のみがなくなっていたとのこと。  これにより、『運命の二人認定クラブ』はテーマパークから撤退。  その為、認定証はもう二度と手に入れることができなくなり、ネットオークションではその認定証が高値で取り引きされる事態となってしまった。  運命の二人等という甘美な言葉に踊らされ、そのようなものを形づけて証明しようとした結果が招いた、なんとも言えない事件。  ひとつだけインターネットのコメントに皮肉めいたものがあったので、手記の最後に残しておく。 『最初に殺されたカップルは最後まで一緒だったから、やっぱり運命の二人だったんじゃねえかな』
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