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先生も先生で、舞美ちゃんの悪ふざけに"一応"乗ってあげてるところが、また先生の優しいところだ……と思う。
……でも、そろそろ終わらせるべきかな?
迷っていると、先生がちらちらと時計を気にし始めたので、声をかける。
#翠月 柚奈
「それで、あの……暁、先生。お話の続きは……?」
#暁 若虎
「あぁ、そうだった。……翠月、来月の生徒総会、お前も行ってこい」
先生は思い出したように手紙のようなものを取り出し、私の机に置いた。
#暁 若虎
「生徒総会見学会の招待状だ。お前に渡してくれと、あのキザな生徒会長殿に頼まれた」
#翠月 柚奈
「え……これ、私にですか?」
静かに頷いた先生は、少しの間考えるように遠くを見つめる。反応を待つと、やがて私に視線を合わせた。
#暁 若虎
「さっきあまり眠れてないって辻崎が言ってたな。なんだったら俺から断ってもいいぞ」
#翠月 柚奈
「あ……いえ! 生徒総会には凄く興味があったので……行きたいです」
#暁 若虎
「ふーん……そうか……」
――……何かを考えるような、謎の間に少し疑念を抱いた。
#暁 若虎
「まあ、総会があるのは2学期始まってからだしな。きつかったらまた言ってくれ」
#翠月 柚奈
「ありがとうございます」
#男子生徒
「先生〜まだですかー、ホームルームの時間終わるんですけど〜」
#暁 若虎
「あぁ、悪い。待たせたな」
――すると、先生はわたしにスッと近づき囁いた。
#暁 若虎
「……さっきは助かったぜ、さんきゅ」
#翠月 柚奈
「……っ!?」
突然の行動に体中の温度が上がる。
いっ、いま、耳元で……っ!
さ、さささ、囁かれた……!?
な……なんで!?
#暁 若虎
「さ、次の話題うつるぞ~。前にも言ったように10月に体育祭が――」
せ、先生……な、なんでそんな普通にしてられるんですか……?
#辻崎 舞美
「……しっかし、自分で選んどいてなんだけど、変な高校だよなぁ……。生徒総会の見学のついでにお茶会へご招待って」
#翠月 柚奈
「……」
#辻崎 舞美
「ちょいちょい、聞いてる?」
ぼんやりしていた私に舞美ちゃんが声をかけてきた。
#翠月 柚奈
「……へ? あ、あぁ、なに?」
少し戸惑いながら返事をする。
#辻崎 舞美
「ほ~ん……」
にやりと笑って何かを想像してるようだった。
#翠月 柚奈
「な、なに……っ?」
#辻崎 舞美
「べっつに~……」
なんだか楽しそう。――楽しそうなのはいつものことか。そんなことを思いながら、返事をする。
#翠月 柚奈
「た、たしか……5年ぐらい前から始まったんだっけ」
生徒会は生徒の学校生活をより良くするために存在するはずだけど、生徒と生徒会の間に妙な壁がある。それをなくすため、そして純粋に生徒会への興味を持ってもらうために生徒総会見学という名のお茶会に招待されるのが、うちの学園の恒例行事。
#辻崎 舞美
「なんだ、ちゃんと聞いてたのか」
「そーそ。今年の生徒会長もあのルックスだし、あの人目当てで生徒会へ媚売ってる女子もいるとかいないとか」
生徒会長……。この学校の七不思議のひとつ。
代々生徒会長を担うのは美形揃いという噂だ。
#翠月 柚奈
「でもなんだかあの先輩……なんかこう……纏ってる空気が変っていうか……」
――入学式で初めて出会ったあの日。周りは黄色い歓声を上げているのに、私はなぜか怖いと感じてしまった。……理由はわからないけど。
#辻崎 舞美
「それ、わかる。あたしも生徒会長殿は好かないな」
「あいつ、絶対何か隠してるわ」
#翠月 柚奈
「えっ……それって何か憑いてる……ってこと?」
こういう類の話は、彼女のほうが詳しい。
#辻崎 舞美
「さあ~? ただなんとなく"感じた"だけ。……憑いてるかどうかは分かんないな」
#翠月 柚奈
「そっか……」
舞美ちゃんも同じような違和感を覚えていたことに安堵した。
#暁 若虎
「――てなわけで。くれぐれも怪我には気をつけるよーに!」
「よし、んじゃ今日はこれで解散! ……翠月、号令を頼む」
我に返ると、先生の解散の合図が聞こえた。しまった、体育祭の話聞くのすっかり忘れていた。
#翠月 柚奈
「き、起立! ……礼!」
#クラス一同
『ありがとうございましたー!』
#暁 若虎
「おう、おつかれさん。始業式忘れんなよ?」
……あとで先生に、もう一度尋ねに行こう。
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