おはよう

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おはよう

「……………」 どこかから、ぼそぼそと声が聞こえた。 あれ、俺死んだんだよな? じゃあ、これは誰の声? 「ねえ、起きてよ…。ねえ。」 聞き取れなかった声が誰かの泣き声になっていた。 誰か…違う。 彼女の声だ。 俺を…呼んでいる? ゆっくりと目を開く。 彼女が黄金の瞳を大きく見開いて、こちらを見つめていた。 瞳から、大きな水の粒が溢れ出す。 彼女は、呟いた。 「おはよう。」 泣きながら微笑む彼女の後ろに朝日が見える。 俺は返事も返さず、立ち上がった。 彼女も何も言わず、俺の隣に並ぶ。 美しい朝日だった。 『黄金の花』でみた輝きのようだ。 「綺麗、だな。」 「おかげさまで。」 彼女は、ふっと笑みをこぼした。 本調子に戻ったようだ。 「私は、『黄金の花』で魔力が増えて、夜を朝に戻した。 それから、君のことも助けられる気がして、頑張ったよ。」 彼女は、ポロポロと涙をこぼす。 「私、君にだけは生きていてほしかった。」 「…え?」 「私、君が倒れた時思ったの。 絶対に君に『おはよう』って言おうって。」 誇らしげな彼女の顔が黄金にそまった。 「ありがとう。俺のために。それから……」 俺は、彼女に笑いかける。 「おはよう」
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