こんばんは

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「ほら。乗ってちょうだい。」 彼女のまたがった後ろに乗り込む。 いまだに美女とピッタリくっつくのは気まずい。 「あなたは、『黄金の花』はどんな花だと思う?」 「さあ。想像もつかないや。」 「綺麗なものがいいな〜。」 のんびりとマイペースに空を飛び続ける彼女に、今なら言えるかもしれないと思った。 「実は俺は、お人よしではないんだ。」 彼女は、一度黙った。 その背中は何を考えているのかわからない。 「それは……どうして?」 静かな夜に響く。 ただ、純粋な疑問を投げかけたような様子だ。 「『黄金の花』は魔法を強化する薬としての力もあるけど、全ての病気を治す薬でもあるんだ。 だから、この世界を間違えて夜にしてしまったけど それを元に戻す力がなくて『黄金の花』を探していた君を使ってしまおうと思った。」 彼女が息を呑んだのがわかる。 でも、俺は…もう…。 咳が溢れて、息が苦しい。 俺が荒い息をする中で、彼女はただつぶやいた。 「知ってたよ。」 「……は?」 彼女はこちらを振り向く。 口元がにんまりと笑っていて、不気味さすら感じる。 「君が不治の病で、『黄金の花』を盗ろうとしていることを。」 「なんで…?」 彼女は前に向き直って笑った。 俺は、目を丸くする。 「一応、これでも魔女だし?あとは、女の勘?」 「いや、そんなことじゃなくて。」 「…そんなこと…」 「そうじゃなくて。 俺が盗ろうとしてること知ってたのに、連れてきたのはどうして?」 彼女の温度が微かに下がる。 冷たいオーラが溢れ出た。 「始めは私も本気で探してた。でも、君も知ってるでしょ?魔女狩りが起きてるの。 朝を消し去った魔女なんて、速攻で捕まっちゃうよ。 魔法をかけた本人が消えると、魔法は解除できるからもう、それでいいかなって。」 ぎゅっと音を立てて、箒を握る。 「最後に君を楽しく旅ができるならそれでもいいかなって思って。」 あまりにも軽い。でも、笑い方がぎこちなかった。 なんて声をかけたらいいのかわからない。 そもそもなんと声をかけても無意味な気がした。
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