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主訴:性格が悪いので
平凡な吊しのスーツに身を包んだ男が、どこか落ち着かない足取りで廊下を進んでいく。落ち着かないのは、壁も床も白くて目に優しくないからかもしれない。やがて、白い扉までやってくる。扉の横にはゴシック体で「C外来」と書かれていた。間違いない、ここだ。
扉をノックすると中から「どうぞ」と声がした。意を決して中へ入る。
こぢんまりとした部屋には、PCの大きなモニタの乗った机があり、医者と思わしき男性がその前に座っていた。脇には看護師と思わしき女性が立っている。
「どうぞ、お座りください」
「よろしくお願いします……」
医者はまるでモナリザのようなアルカイックな表情で、機嫌が良いのか怒っているのかすらわからない。よくできたロボットだと言われても信じてしまいそうだった。
ペコペコしながら、男は勧められた椅子に座った。
「小村たつみさんですね。今日はどうされましたか?」
相変わらず感情の乗らない声でそう問われ、小村は
「あの、同僚に、その、指摘されまして」
絞り出すような声で告げた。
「何を指摘されたんでしょうか」
「その……恥ずかしながら、性格が、悪い、と……」
「なるほど」
「それで、私自身も、確かにそういう部分があるな、と言う自覚がありまして。できれば直したいと思っていたところに、その、ズバリ指摘されてしまいまして……」
消え入りそうな声で告白した小村に、医者は深くうなずいた。ようやく感情らしいものが見える。
「こちらは性格改善外来、通称キャラクター外来です」
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