1人が本棚に入れています
本棚に追加
桜の花びらが夜空に舞い上がる。
降り注ぐ薄紅色の中で、もう一度確かめるように梔子を見る。
花びらの行方を見守る梔子の眼差しは、酷く優しい。
ただそれだけのことなのに、愁哉は息が苦しくなる。
魔法使い。
次の戦争において、武器になるかもしれない女の子。
立場上、いらぬ感情を抱くべきではない。
ただの道具として見るのが正解だ。
なのにーー。
この夜のことは当分愁哉を苛んだ。
目を閉じると梔子の顔が浮かび、いつまでもいつまでも落ち着けなかった。
最初のコメントを投稿しよう!