1人が本棚に入れています
本棚に追加
つまり、最初からそのつもりだったのだ。
「なら、暗殺のことは……」
「びっくりしました」
それはそうだろう。
愁哉は肩を落とした。
あまりにも淡々としてるから、梔子も分かっていることだと思っていた。
「でも言ったじゃないですか。『正体をご存知ですのね』って」
「鎌掛けです」
梔子はくすくす笑った。
「でもお陰で、中尉の狙いが分かりました」
国分寺はあの男を、魔獣に殺させるつもりだったのだ。
言葉の裏を読めぬとは、諜報員失格ではないか。
落ち込む愁哉を見て、梔子は体の後ろで手を組んで、斜め下に視線を落とした。
「土壇場で、ですけどね」
魔獣が飛び出してくるまでは分からなかった、と。
「はは……」
愁哉は苦笑した。
分からなかったより幾分ましだ。
なにより、軍内部の不祥事を喋ってしまったことが痛い。
これは充分弱点となりうるだろうに。
梔子はいつか、このことを利用するだろうか。
その前に彼女の弱みを握るべきかーー。
「私も園部様に聞きたいことがございます」
梔子が足を止めた。
2歩遅れ、愁哉も立ち止まる。
振り向くと、本当に不思議そうな顔で梔子が首を傾げていた。
最初のコメントを投稿しよう!