美しき死神

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国分寺が首を伸ばすと同時に、扉が鳴った。 兵士に連れられてきたのは、梔子だった。 「こんにちは、中尉」 濃紺のワンピースを纏った彼女は、昼の光の中だと儚げである。 もっと強い光を浴びれば、たちまち透けていってしまいそうだ。 「入りなさい」 「失礼致します」 扉が閉まる。 梔子は優雅に歩いてくると、愁哉を見て目礼した。 愁哉は軽く頷くことで応じる。 「此度はご苦労だった」 「いえ、中尉の頼みですから」 「お陰で大切な部下を失わずに済んだ」 どうだろう、と国分寺は両手を組み、前のめりになった。 「もうひとつ、頼まれてはくれないだろうか」 「あら。高くつきますわよ、中尉」 「色をつけてお支払しよう」 「まあ」 ほほ、と梔子は唄うように笑った。 なるほど、抜け目のない女であるらしい。 「では、詳細は園部上等兵から聞くように。園部上等兵」 「は」 「頼んだ」 「はい」 昨夜のことは顔合わせの意味もあったのだろう。 標的は梔子個人だろうか。 西院家だろうか。 それとも……。 世界情勢はここ数年で急速に悪化している。 いずれ来る炎の嵐に向け、武器になるのは人や銃だけではない。
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