あなたの身体、お守りします。

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診察室には、私とお嫁さんだけが残った。 お嫁さんの顔が緩む。 「疲れてるわね」 私はそう言って、お嫁さんにビタミン剤を渡した。 「すみません」 小さい声で、そう返事したお嫁さんに対し、私はこう言った。 「医者としての長年の勘だけど、あなた姑にこき使われてるんじゃない」 お嫁さんは私を見て、目を丸くさせる。 「図星みたいね。今から言うことをよく聞いて。私は医者として、特別指示書というのを書きます。それをすると、医療保険で看護師が訪問できるようになります。看護師から容態が悪いと連絡受けると、私も往診で自宅に向かうことができます。後は救急車を呼んで、病院に搬送します。搬送先は、このクリニックと提携しているところ。そこで入院、その間、介護保険を申請して、入院先から老人ホームに移動させる事ができます。お金はかかりますが、あなたは自由を手にする事ができます。あなたのためにも、そのような段取りを取りたいのですが、よろしいですか」 私の説明を聞いていたお嫁さんは、涙を流しながら、首を縦に振った。 「ありがとうございます。そうしたら姑さんには、軽めの痛み止めを出しておきますね。おくすりを全く出さないわけにもいかないから」 そう言うと、お嫁さんは席を立ち、私に深々と頭を下げた。 「そんなに頭を下げなくてもいいのよ。姑さんには、CT検査の結果をもとに、もっと詳しく調べさせて下さいとでも言っておくわ。大丈夫よ」 お嫁さんは泣き続けている。 そんなお嫁さんに、私はこう言った。 「あなたの身体、お守りします」 (終わり)
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