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「リーナ、おくすりが欲しい」
私が家の庭の掃除をしていると、ルノがやってきた。
長期休みに突入して、私たちは地元に帰ってきていた。パートナー解消について私たちは何も触れなかった。なんとなく気まずくてそれぞれ家族と過ごしていたのだ。
突然やってきたルノに面食らっていると、ルノは私を引っ張っていつものテントに私を連れて行った。
ここに来るのはもう何年ぶりだろうか。あの頃と変わらない柔らかい光の中、私たちは並んで座った。
いつものように前髪をかきあげたルノに
「おくすりはもうやめにしない?」と私は言った。
自分で思っているよりも冷たい声が出た。
目を閉じていたルノはゆっくりと瞳を開けて、少しだけ驚いたようだった。その表情を見て、申し訳無さが込み上げた私はうつむく。
「ほら、私たちパートナーでもなくなったでしょ。おくすりは彼女からもらうべきよ」
「彼女にキスしてもらえってこと?」
「そういう意味じゃないけど……治癒は彼女がしてくれることになるんだから」
嫉妬でまみれた醜い言葉たちだ。でもドロドロした感情は止まりそうになかった。
「僕の心はリーナじゃないと救えないよ。身体の治療をしてもらっても、おくすりはリーナにしかもらいたくない。心が痛くなった時に僕を助けられるのはリーナだけだよ」
いつものふやけた声ではなかった、真っすぐで凛とした声がした。
ルノの言葉はすごく嬉しい、嬉しいけれど、ルノは私のおくすりでは胸が痛くならないんだ、と虚しさが広がった。
ルノは私を慕ってくれていて、頼りにしてくれているのに。申し訳なさでまた胸がぎゅっとする。
「リーナ、どうして泣いているの」
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