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満月の夜のこと。暗い庭、すすり泣く声に誘われて出逢ったのは天使。
「どうして泣いているの?」
涙をたっぷり浮かべてそこにうずくまっている子は男の子なのか、女の子なのかわからない。確かなことは、天使のように美しいということ。
長いまつげは涙に濡れて、滴り、ぽたんと落ちた。
「あなたの涙、きらきらね」
天使の隣に座った私は声をかけた。天使はまだ泣き続けている。
そうだ、お母様がいつもくれるおくすりをあげよう。
「元気が出るおくすりをあげるわ」
「おくすり嫌い」
天使はぽつりと呟いて、涙がまたこぼれる。
「大丈夫よ、私のお母様は天才の魔女なの。いつも元気が出るんだから」
「苦いのやだ」
「飲み薬じゃないから安心して」
私は天使の前髪にそっと触れた。さらさらの金髪。その隙間から涙が浮かんだサファイアが覗く。本当に天使だ。
天使の前髪を少し掬って、私はおでこに小さなキスをした。
どうか痛みが取れますように。
「はい、おくすり。苦くないでしょ?」
「うん」
「ほら涙も止まったでしょう?」
「うん、ありがとう」
涙が止まってもキラキラの瞳のまま、天使は笑顔を私にくれた。
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