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ルノの長い指が私に伸びて、彼の指に雫がつたった。掬えなかった涙が膝にポタリと落ちて、自分が泣いていることに気づく。
「初めて見た、リーナが泣いているところ。おくすりをあげてもいい?きっと涙が止まるよ」
私が顔をあげると、ルノは優しく微笑んでいる。大人びた表情に驚きながら私は首を振った。
「私はルノにおくすりをもらうと、だめなの」
「どうして?」
ルノの声は大人ぽくて、私は泣いたままの子供だ。いつもと逆だ、こんな私は恥ずかしい。でも涙は素直な気持ちも流していく。
「ずっと胸が痛いままで、全然よくならない。心もざわざわするどころかドロドロだよ!ルノのおくすりは全然回復薬じゃない。ルノのおくすりは惚れ薬かも。どんどん好きになるからおかしい。」
むちゃくちゃに思いのままを吐き出したけれど、言葉にしてしまえば、拍子抜けするほどシンプルな感情だった。
ずっと気付いていた気持ちなのだから、言葉にするとしっくりと身体に馴染んだ。
そうだ、私はもうずっとルノが大好きで大好きで苦しいんだ。
少しだけ沈黙が暗闇にとけてから
「うん、じゃあもうおくすりはおわりにしよう」
ルノは震えた声でそう告げたから、私の涙はまた地面に落ちたけれど
「リーナ、顔をあげて」
ひどく優しい声が降ってきて、私はゆっくりと顔をあげた。
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