血を与えし者の運命

12/19

10人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「嘘です!! 早く、早くわたくしをお喰べください! 」 「喰えるわけないだろ」 「なぜです!」 「さあな、わからないが、お前のことは喰えぬ。別の人間を連れて来てくれ」 「そんなの、無理です!」  さっきまで楽しそうに笑っていたエーデルが、また大粒の涙をポロポロと流す。 「泣くな、エーデル。お前は笑った顔の方が愛らしい」 「そんなの、今言われても嬉しくないです!」 「すまない」  またすぐ怒る。そう思いながらも、ヴィレンスは心が満たされていた。  ヴィレンスの意識が少し遠くなりかけたころ―― 「おい、この辺りのはずだ! 探せ!」 「エーデル! どこだ!!」  川の方から兵士の声がした。  一晩経っても帰ってこないのエーデルを心配した祖母が、兵士に捜索を頼んでいたのだ。 「どうしよう……!」  その声にエーデルは焦った。  ヴィレンスが見つかれば、間違いなく殺されてしまうからだ。 「ヴィレンス様、逃げなきゃ」 「俺はもう動けない。お前だけ行け」 「嫌です!!」 「まったく貴様は強情だな……」  ヴィレンスは呆れたように笑うと 「エーデルならここに居る!!!」  すぐ近くに居る兵士に向かって、そう叫んだ。 「ヴィレンス様、なにを……!」
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加