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「嘘です!! 早く、早くわたくしをお喰べください! 」
「喰えるわけないだろ」
「なぜです!」
「さあな、わからないが、お前のことは喰えぬ。別の人間を連れて来てくれ」
「そんなの、無理です!」
さっきまで楽しそうに笑っていたエーデルが、また大粒の涙をポロポロと流す。
「泣くな、エーデル。お前は笑った顔の方が愛らしい」
「そんなの、今言われても嬉しくないです!」
「すまない」
またすぐ怒る。そう思いながらも、ヴィレンスは心が満たされていた。
ヴィレンスの意識が少し遠くなりかけたころ――
「おい、この辺りのはずだ! 探せ!」
「エーデル! どこだ!!」
川の方から兵士の声がした。
一晩経っても帰ってこないのエーデルを心配した祖母が、兵士に捜索を頼んでいたのだ。
「どうしよう……!」
その声にエーデルは焦った。
ヴィレンスが見つかれば、間違いなく殺されてしまうからだ。
「ヴィレンス様、逃げなきゃ」
「俺はもう動けない。お前だけ行け」
「嫌です!!」
「まったく貴様は強情だな……」
ヴィレンスは呆れたように笑うと
「エーデルならここに居る!!!」
すぐ近くに居る兵士に向かって、そう叫んだ。
「ヴィレンス様、なにを……!」
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