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「ヴィレンス様、お逃げください!!」
「黙れ!」
「きゃ」
ヴィレンスを逃がそうと、必死にもがくエーデルを容赦なく男が殴った。
その衝撃で、エーデルは一瞬でぐったりとしてしまった。
「……愚かな人間どもめ」
ヴィレンスのなかで、とてつもない怒りがこみあげてくる。
人の姿から、また狼へともどっていく。
怪我をしていることなど忘れ、牙を剥きだし、低い声で唸る。
「赤目の人狼であったか。取り逃したと思ったら、こんなところに逃げ込んでいたとは」
兵士の一人が片方の口角を上げニヤリと笑う。
彼はずっと、ヴィレンスのことを追い続けていた一人だった。
「ウウゥゥゥッ」
エーデルの耳に、ヴィレンスの低い唸り声が聞こえる。
すぐに失った意識が戻り、目の前で繰り広げられている争いが視界に飛び込んできた。
「ガウッ!!」
「くそっ」
狼の姿に戻っているヴィレンスが、兵士に噛みつく。
兵士も負けずとヴィレンスを蹴り上げると、鈍い音と共にヴィレンスが地面へと転がった。
「ヴィレンス様!!」
思わずエーデルが叫ぶと、再び彼女を捕らえている男が黙らせようと殴りかかった。
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