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「グァウッ――!!」
エーデルがギュッと目を瞑ると、ドンッと何かに強くぶつかる衝撃と共に、すごいスピードで自分の身体が移動しはじめた。
「ヴィレンス様……!」
目を開けると、ヴィレンスの背中の上だった。
「すまない……こんなことになるとは思わなかったッ……」
猛スピードで森を駆けていくヴィレンス。
その速さに振り落とされないよう、エーデルはギュッと首に抱き着いた。
森を抜け、川を越え、岩を飛び。
ヴィレンスはエーデルのために走り続けた。
やがて、洞穴を見つけ、そこにエーデルを下した。と、同時にヴィレンスはバタッと倒れてしまった。
「ヴィレンス様!」
「はぁはぁッ……」
限界をとうに超えていたヴィレンスは、ぐったりとしたまま狼の姿から人の姿に戻っていった。
「嫌です、死なないでください」
エーデルはそんなヴィレンスの頭を抱きかかえ、また涙を流し始めた。
「エーデル……最期にお前と話せてよかった……」
「最期なんて言わないでください……!」
「怒るな……」
「怒ってませんっ」
「まったく、お前は……」
ヴィレンスが目を細める。
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