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「笑った顔が見たい」
「こんな状況で、笑えませんっ」
「頼む」
「無理です……」
ヴィレンスがエーデルの顔に視線をやると、口の端から血が出ているのが目に入る。兵士に殴られたはずみで口の中が切れたのだろう。
「……痛かっただろ」
「こんなの、なんともありませんっ」
どこまでも強情なエーデルに、ヴィレンスはまた呆れたように笑った。
「お前はいつまでもそのままでいろ」
「ならば、ヴィレンス様と一緒がいいです」
「何を言うか、私は魔物だぞ」
「だからなんですか! あんな人間といるくらいなら、魔物の方がいいです」
「おかしなやつだ……」
ヴィレンスの手の平が、そっとエーデルの頬を包む。
「お前は、私を慕っているのか?」
「……それはっ」
その言葉に、涙を流しながらも頬を赤く染めるエーデルを見てヴィレンスは嬉しそうに微笑む。
「どうやら、私はお前のことを好いているようだ」
「えっ」
「お前はどうだ? 私が嫌いか」
「そ、そんなわけありません! わたくしも……ヴィレンス様が好きです」
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